BSVアソシエーション(BSV Association)は、アンドロイド向けのBSVウォレット(BSV Wallet)をグーグルプレイ(Google Play)で公開した。決済、鍵管理、外部アプリケーションとの連携を中心とする自己管理型のモバイルウォレットである。
グーグルプレイの掲載情報では、開発者としてBSVアソシエーションが記載されており、ユーザーの端末上で鍵を生成・保存する、オープンソースかつ標準規格に基づくウォレットと説明されている。ストアのインデックス情報によると、アンドロイド版は2026年9月5日に公開された。
公開ソースリポジトリでは、React NativeとExpoで構築されたiOSおよびアンドロイド向けのモバイル決済ウォレットと説明されている。ただし、現時点で一般公開が確認されているストア版はアンドロイドのみである。
BSVウォレットは、BSVブラウザ(BSV Browser)とは異なり、ウェブ閲覧機能を内蔵していない。起動すると、残高、支払い、受け取り、Vault、利用履歴などのウォレット機能へ直接アクセスする構成となっている。
ただし、従来型の送受金専用ウォレットにとどまるものではない。BRC-100を通じて、外部アプリケーションから利用できるユーザー管理型のウォレット基盤としても機能する。
3つの支払い方法
BSVウォレットは、一つの支払い画面から3種類の方法を利用できる。
MessageBox/PeerPayのハンドル、近くにある端末同士の直接転送、または従来型のP2PKH BSVアドレスを使って、支払いを送受信できる。
このうち近距離決済では、その時点で2台の端末がインターネットに接続されていなくても、近くにあるスマートフォン同士でトランザクション情報を直接やり取りできる。
アンドロイド版ではNearby Connectionsを利用する。オフライン状態で作成されたトランザクションは待機させ、必要なネットワーク接続が利用可能になった後に送信または取り込むことができる。
ただし、これはBSVブロックチェーンそのものがオフラインで動作するという意味ではない。端末間のローカル接続によって支払いに必要な情報を交換できる一方、ブロックチェーンへの送信とその後の処理には、BSVネットワークのインフラへの接続が必要となる。
外部アプリケーションとのペアリング
BSVウォレットは、外部のデスクトップアプリケーションやウェブアプリケーションと接続することもできる。
ユーザーはペアリングコードを読み取り、BRC-100ウォレットインターフェースを通じて、外部アプリケーションからの要求をスマートフォン上で承認できる。BRC-100は、特定のウォレット事業者に依存せず、アプリケーションからウォレット機能を要求するための共通インターフェースを提供する。
ペアリングされたアプリケーションとの通信には、暗号化されたリレー方式が利用される。現在対応するBRC-100の操作には、トランザクションの作成と署名、公開鍵の要求、証明書、暗号化・復号、署名などが含まれる。
ペアリングしただけで、外部アプリケーションに無制限のアクセス権が与えられるわけではない。
各操作は引き続きウォレットの権限管理を通過する。外部アプリケーションが処理を要求し、それを許可するかどうかはウォレット側で判断される。
これはBRC-100が担う役割の一つを示している。アプリケーション自身がウォレットになることなく、ユーザーのウォレットが管理する暗号機能やトランザクション機能を利用できるのである。
鍵はユーザーの端末内で管理
BSVウォレットは自己管理型である。
ルートウォレットはBIP-39ニーモニックから生成され、そのニーモニックは端末の安全なストレージ機能を利用して保護される。トランザクション情報やウォレットの状態は、SQLiteを使って端末内に保存される。
ストアの説明によると、鍵は端末上で生成され、端末外へ送信されない。ウォレットのロック解除には、端末の生体認証を利用することもできる。
復元方法としては、12語のリカバリーフレーズに加え、印刷可能な復元用シートも用意されている。
3枚の復元シートを作成でき、そのうち2枚があればウォレットを再構築できる。ストアの説明では、この復元方式をBRC-157としている。
また、ウォレットデータベースのインポートとエクスポートにも対応する。
この機能は、ウォレットの暗号学的なルート鍵を復元することと、ウォレットが保持する状態全体を復元することが、必ずしも同じではないという点で重要である。データベースのバックアップを利用すれば、ニーモニックだけでは保持できない情報も保存できる。
BEEF、派生鍵、選択可能なインフラ
グーグルプレイの説明では、BSVウォレットはSPVネイティブで、軽量なトランザクション検証にBEEFを利用するとされている。
また、BRC-42による派生鍵にも対応している。これにより、異なる相手とのやり取りで同じ鍵やアドレスを繰り返し使用する代わりに、それぞれに派生した鍵を利用できる。
インフラ面では、ARCを通じてトランザクション状態をバックグラウンドで監視する機能を備える。また、ネットワークサービスは単一の事業者に固定されず、設定によって変更できる。
ARCおよびChainTracksのインフラを設定できるほか、メインネット、テストネット、Teratest環境に対応する。
オープンなウォレット実装において、これは特定のインフラ提供者をウォレットプロトコルそのものに固定する必要がないことを意味する。
オプションのハードウェア保護型Vault
公開ソースリポジトリには、対応するユビキー(YubiKey)によって保護されるオプションのVault機能も含まれている。
この仕組みでは、通常のウォレットとは別の支払い用鍵を外部ハードウェアで保護する。iOSではNFC、アンドロイドではUSB/CCIDを利用する。
これにより、通常の端末内で管理する鍵と、追加のハードウェア保護の下に置いた資金を分けて管理できる。
ただし、現在のアンドロイド版ストア説明では、ユビキー機能は主要機能として明確には案内されていない。そのため、ソースリポジトリ上で確認できる実装と、グーグルプレイ上で説明されている機能は区別して見る必要がある。
BSVウォレットとBSVブラウザの違い
BSVアソシエーションは現在、ウォレット機能の一部が重なる一方、アプリケーションとの接続方法が異なる2つのモバイル製品を提供している。
BSVブラウザは、ブラウザ、自己管理型ウォレット、BRC-100環境を一つのアプリケーションに統合している。アプリ内で開いたウェブサイトは、ユーザーの許可を前提としてウォレット機能を要求できる。
一方、BSVウォレットにはブラウザ機能がない。
BSVウォレット自体はウォレットとして独立して動作し、トランザクション、アイデンティティ、暗号処理などの機能が必要になった場合には、外部アプリケーションがBRC-100を通じて接続する。
したがって、両者の違いは、一方が単に「専用ウォレット」であるということではない。
BSVブラウザでは、ブラウザとウォレットが一つのアプリケーション内に存在する。BSVウォレットでは、外部アプリケーションを独立させたまま、ユーザーのウォレットが鍵、権限、認可を管理し続ける。
現時点で確認されているのはアンドロイド版
BSVウォレットのプロジェクトには、iOSとアンドロイド双方のビルド環境が含まれている。しかし、現時点で一般公開が確認されているのはアンドロイド版である。
ストアのインデックス情報では、BSVアソシエーションによるアプリケーションが2026年9月5日に「Finance」カテゴリーで公開されたと記録されている。
独立したBSVウォレットアプリについて、対応するアップルのApp Storeでの一般公開はまだ確認されていない。そのため、現段階でアンドロイドとiOSの同時公開が完了したと捉えるべきではない。
編集者の見方
今回のリリースの背後には、シンプルだが重要な考え方がある。ウォレット自身がアプリケーションである必要はなく、アプリケーション自身がウォレットを抱え込む必要もないということである。
ユーザーは鍵、トランザクションの状態、操作権限をBSVウォレット内で管理したまま、別のアプリケーションでまったく異なる機能を利用できる。
そのアプリケーションが支払い、署名、公開鍵、証明書、暗号化などの機能を必要とした場合には、BRC-100を通じてウォレットへ要求できる。アクセス管理の境界は引き続きウォレット側にあり、どの操作を許可するかはユーザーの管理下に置かれる。
BSVアプリケーションが将来、利用者が背後のブロックチェーンインフラをほとんど意識しない一般的なソフトウェアとして利用されるのであれば、この分離はさらに重要になる可能性がある。
こうした共通のウォレットインターフェースが機能すれば、開発者がアプリケーションごとに新たな鍵管理や保管の仕組みを構築する必要性を減らすことができ、ユーザーも利用するサービスごとに自分の鍵を預けたり移したりする必要がなくなる。
近距離決済の仕組みは、そこにもう一つの可能性を加える。通常のインターネット接続がその場で利用できなくても、2台のスマートフォン間で支払いに必要な情報をローカルに交換し、接続が利用可能になった後にブロックチェーンへ送信できる。
これらの機能は、基盤となるBSVプロトコルそのものを変更するものではない。変わるのは、アプリケーションや利用者がその基盤へどのように接続するかである。
今回のグーグルプレイ公開の意味は、単に新しいモバイルウォレットが一つ増えたこと以上にある。
支払い、自己管理、アプリケーションとの相互運用性を中心に設計されたBSVアソシエーションのウォレットが、ソースコード上の開発から、一般利用者が入手できるアンドロイドアプリへと移ったのである。
今後の重要な節目となるのは、iOS版の公開、より充実した文書の整備、実際の利用環境における外部アプリケーションとのペアリング、そして開発・試験環境の外で近距離オフライン決済がどのように機能するかを示す実例である。
参照リンク
BSVウォレット — BSVアソシエーションのギットハブ(GitHub)リポジトリ
※本記事は、原記事の発行元であるBSVタイムズの使用許諾を得て、原記事を要約・翻訳・編集のうえ掲載しています。
2026年9月13日
