Dr. クレイグ・ライト講演 in 英ケンブリッジ大学 メタネット・ソサイエティ|The Bitcoin Vision by Dr. Craig Wright with the Metanet Society of University of Cambridge

Dr. クレイグ・ライト講演
in 英ケンブリッジ大学 メタネット・ソサイエティ
The Bitcoin Vision by Dr. Craig Wright
with the Metanet Society of University of Cambridge


訳:BSVJ(意訳・省略ヵ所あり)

ウェルカム。ご出席頂き大変嬉しく思います。

テック関連のお話をする前にいくつか質問があります。

皆さんはグーグル検索、Gメール等、すべてのプライバシーを完璧に守れるとしたら、それへ一日当り1セントを支払いますか?

広告ゼロ、クッキーなし、皆さんの個人情報が売りさばかれることもありません。

グーグルがこれでどれほどの利潤を得ているかご存知でしょうか。恐らく同社価値の40倍ほどを稼いでいるはずです。彼らは極めて非効率です。酷い広告、悲惨なクリック率等。

グーグルでは63千ほどの検索が日々行われていますが、それらは有料化することができます。

2月、我々はそれだけのボリュームを扱うことができ、ユーザーは様々な場面において、金銭のやり取りをすることができるようになります。

現状、クレジットカードの手数料が高く、そうすることが難しい環境にありますが、例えばバンドルを組み、メール、検索、トゥウィッチ、その他すべて(プライバシー完全保護で)6ヶ月分を定額で3ドルほどに設定することもできるはずです。私としてはそのほうが遥かにいいと思います。

多くの人がブラウザー上のウォレットの信頼性を語りますが、ハッカーが一台当たり1ドルを盗むことを目的に、何百台ものコンピューターへ侵入しようとするでしょうか。そんなことはまずないはずです。既にGメールアカウントより安全で、バックアップ等も問題ありません。一般的なクレジットカードよりも信頼できます。

では本題に入りましょう。

ハッシュパズルのセキュリティを疑問視する人が多いようです。危険であれこれできないなどと言っていますが、そんなことはありません。あれこれできます。

実際に、暗号化を違った形で行うことができます。暗号化技術とはこう機能するなどともっともらしく語る人がいますが、気にする必要はありません。

キーの問題にしても、一時使用が想定なので危険はありません。ソニ―に対するアタックでキーが破られたとか、そういうものとは異なります。

キーが直ぐに枯渇することもありません。仮に秒あたり10億個生成されたとして、100兆年あればどこかで一杯になるかもしれませんが。

(略)

初期のビットコインのコミュニティに起こった問題で、みながトランザクションが大き過ぎる、複雑過ぎると騒いでいました。

結果スクリプトOPリターンが切られてしまうなど、本当に不快な時代でした。エリック・ヴォーヒーズなどが「ビットコインはお金であればそれで十分だ」などと私に詰め寄ることもありました。彼に理由はなく、とにかくそれでいいんだよといった主張だけで、その他のもっと大きな可能性を考えていないのです。

ブロックチェーの真価を掘り下げて考えてみると、経済原理に従ったセキュリティモデルということになります。皆さんが使っているGメール、グーグル検索、OneDriveへのファイル保存等は実際の「使途」です。使用されればされるほどその価値は増加し、価値が増すほど安全性が高まります。

もちろんそれは、全ユーザーがノードを展開するわけではなく、企業らが競争して稼ぎを追求することによるものです。マイナーが稼ぐのは誰よりも先にブロックを勝ち取るからです。ブロックを先に「発見」するからではなく、誰よりも先に「有効」なブロックを確保することによります。これらには大きな違いがあり、有効なブロックを獲得してこそ初めて勝つことができます。

要はゼロサムゲームです。一定時間内のブロック数には限りがあります。他のマイナーが発見した無効なブロックを特定することが、自らの稼ぎを増やすことにつながります。マイナーはすべてのブロックを見渡し、他のマイナーが抱えた無効なブロックを探し出し、それを弾くことにインセンティブが働くわけです。日常的に営まれている極普通の経済的な競争原理です。

これらの維持には様々なシグネチャーハッシングを使います。シグハッシュ、ノンシグハッシュ、オールシグハッシュ、シングル等あり、一つのイン・アウトプットにだけサインすることもできれば、複数のイン・アウトプットをサインすることもでき、またそれらのコンビネーションも可能です。さらにそれらを「リジョイン」させることもできます。一つのトランザクションから別のものへと追加することも可能です。

暗号界では忘れられてしまっていますが、ビットコインは「ピアツーピア」です。アリスとボブが直に決済することを意味するのであり、ピアからノード、メッシュ、ユーザーへとリレーするわけではありません。私がビットコインを創ったとき「IPからIPへ」を想定していました。当時はみな「安全ではない」と騒ぎ立てましたが。

セキュリティを確保しつつ、広告抜きで収益化した場合、1トランザクション当たり、千分の1セント以下で済むようになることを私は期待しています。こうしたビットコインの特性を活かし、皆さんに何ができるかを考えて頂きたいのです。

例えば広告のないフェイスブック、個人情報をNSAに売り渡さないフェイスブック。素晴らしいと思いませんか?すべてのアメリカ人が、黙ってNSAに個人情報を差し出したがっているわけではないでしょう。

契約事項や、EDI、ロジスティックスなどの分野はどうでしょう。現状は膨大な費用をかけながらも、それほどの成果を得ていません。

EDIの平均的なトランザクションコストは3~4ドルと言われています。これは恐ろしい額です。入出荷伝票などは100ドル以上を要します。ウォルマートなどはこれに年間5億ドル以上費やしています。異常な額です。米ペンタゴンは10億ドル近く費やしています。

(略)

世の中は非効率で不安定な決済システムで溢れています。ビザカードも例外ではありません。どのビジネスもビザカードを受け入れていますが、安全とは言い切れません。

それと比較し、皆さんに想像して頂きたいのが、例えばシンプルなアプリケーションがあり、それはブロックチェーンにアクセスし、リンクされた決済システムを通じ、買い物の場で双方が即時、送金を確認できるといった環境です。

リスクフリーな決済の実現により、コストが大幅に下がるわけですから、カード会社が取っている年利30%などはいずれ正当化できなくなるでしょう。

それで、メタネットとはいかなるものでしょう。我々が目指すところは、馬鹿げたショーを事実上入れ替えることです。今日のインターネットのことです。

未だかつて、インターネットと金銭のやり取りをどう関連付けるか、誰も解決策を提供することができていません。クレジットカードは費用が嵩みますし、ペイパルやその他すべてがそうで、結果的にすべてを広告に頼るしかないのが現状です。

それら広告は極めて非効率で、我々のプライバシーを侵害し、我々の全行動を第三者へ売りさばいています。しかも我々がその売上を手にすることはありません。我々が得るのはグーグルなどの「使用許可」だけです。

実現したいものは、トークン利用を取り込むことで、低コストなアクセスを可能にし、個々人がいつ何についえ支払いを行うかといった選択権を得ることです。気に入らないものに支払う必要はありません。

現実的にすべてが安くなります。グーグルが我々の個人情報を売りさばいて得ている額は、本来100倍の値が付くはずです。

90年代、人々がどこかのサイトへ登録したメールアドレスは、一件当たり17ドルで売りさばかれていました。本来、第三者に渡る度に稼げたはずの17ドルは、マーケティング業者に奪われ、ユーザー本人が手にすることはありませんでした。

もし、人々が自身のアクセス情報を売りたいと思えば、自らそれを売れって稼げばいいのです。誰かにかすめ取られた上に、グーグルに広告を押付けられるのでは割に合いません。自ら金銭を取ってグーグルに売ることで、グーグルもまたユーザーが本当に見たい広告を提供することができるはずです。そして彼らは本業の検索に少額の利用料を課せばいいのです。

これはビジネスモデルの差です。ユーザーのクリック、閲覧行動、いいね!などが売りさばかれない世界。ツイッターで繰り返しクリックさせることに専念しなくてもいい環境です。

この新しいモデル、そして社会を衰退させるような悪行が永久に記録可能なことで、ツイッターは、児童ポルノフォトグラファーが別の児童ポルノフォトグラファーを勧誘する場から脱却することができます。ツイッターは、テロリストがテロリストを養成する場でもなくなります。

ツイッターは最大のテロリスト支援の場となっています。これも過去に「新たなビジネスモデル」によって起こったことです。10年前、20年前とは大分異なります。

20年前は、世の中で起こっていることをカメラが捉え、そのショッキングなビデオが世界規模で放映されました。そういう報道はもうありませんし、ツイッターでもそうです。人々は吹聴され、型に押し込まれ、確実に洗脳されています。

テロリズムもまた「教育」によるものです。サイエントロジスト(ある新興宗教)と同じやり方です。ジックリ、確実に刷り込まれ、彼らが好みそうなグループへと誘導されるわけです。それはターゲットにされ、数千ものメンバーが「おぉ、凄い。是非我々の前で講演してください」などとおだて上げます。事実は3人が運営するクリックファームによるものですが。現在の広告ベースのあり方が、こうしたことへ貢献しています。現実からかけ離れた世界です。

本題へ戻り、目指すべきところは、アクセスを収益化させることです。私は持論で「すべての悪行は経済行動に帰結する」と説明しています。

犯罪を掘り下げれば、経済的動機に行き着きます。先日、これまでで最大の児童ポルノネットワークが摘発され、数百もの犯罪者が拘束されましたが、やはりお金が動機です。テロリズムもまた、宗教でも他の何かでもなく、行き着くところはみなカネです。

もちろん、実行犯ではなく上でコントローしているメンバーのことです。そこへ行き着くことができないのは、そのお金の流れを追跡することが困難だからです。スイフトはどうしょうもないネットワークです。多分、40年も前のシステムで、記録は消え失せ、日々集計を必要とする代物です。

レベルの異なる他の可能性を考えてください。ブロックチェーンベースのインターネット使用です。サーバーへのログインは永遠に記録され、それへの攻撃もすべて記録されます。 

過去にセキュリティ関係の仕事に携わっていたとき、実際に見てきたことですが、ハッカーは侵入に関わる全ての証拠を消去します。侵入後、半年間潜伏した後に行動を起こすこともあります。

もし彼らの侵入を捉えることができればその場で対処できます。事後ではなく、送金時に怪しいやり取りが確認可能なシステムであれば、当局が動くことができます。だからインターネットベースのお金、ペイメントメカニズムが必要なのです。そして皮肉も、このシステムはコストが安く済みます。

ブラウザーウォレットが重宝します。現在既に、相当安全性の高いものを作ることができますが、そこで大きな額のやり取りをするわけではありません。Eメールやウェッブ検索などに支払うマイクロペイメントに使用するわけで、誰かがそこにある20セントを狙って皆さんのブラウザーに侵入を試みることなどあるでしょうか。

それをするには膨大な努力を講じて10億台ものマシンに侵入し、しかも侵入記録を残してわずかな額のお金を盗み取るということです。いく日もいく日も時間を費やし、その後にようやくそれらのマシンに侵入して20セントを盗むのです。他の人は知りませんが、私にとってそれはあまりいい時の過ごし方とは言えませんね。

それで、ディターミニスティック・キーですが、インデックス化を可能とする構造を考え、それに取り組むべきです。またビットコインを配管役と捉えるべきです。アクセスグラフ、グラフデータベースがあります。ハッシュに基いたアクセステーブルなど。カサンドラ等のデータベース、これらみなハッシュ上で有効です。ビットコインはそう機能するものです。

ユーザーが詳細なキー情報を細々と確認する必要ありません。「キーの自己管理」などとみなが騒ぎますが、それは間違いです。ユーザー自らがそれらの情報を管理する必要性もなければ、管理すべきでもないのです。ログインだけすればそれでよく、それ以外の数多くの詳細な情報を気に留める必要は本来ありません。

アドレスの序列を計算することでマップ化し、管理します。また、すべてに異なるアドレスを使うわけですからプライバシーは守られます。何ら複雑なことはありません。

もし本気でスケーリングに挑むのならピアーシステムでなくてはなりません。イーサリアムなど、完全に逆行しています。すべてのマシンが参加して、何でもかんでもその上で走らせるなどといったことではありません。

ユーザーはユーザーであり、ピアー同士のプロセスを進めるだけです。その場その場の決済に専念し、当時者双方がお金のやり取りを確認したらそれでいいはずです。あれこれと必要以上に繰り返し確認する必要はありません。

では、ウォレットのデザインですが、多くの人々と意見を交換してください。ピアープロセスを念頭に置き、トランザクションを容易に確認できるようにしたいものです。また低バンドウィズを想定すべきで、毎回取引の全てをブロードキャストする必要はありません。ピアープロセスだけで十分です。

単純決済認証(SPV)、ローバンド等は当初から想定していたビットコインの在り方の一部です。スケーリング、ピアー間取引等を可能とするのがビットコインオリジナルのデザインです。

ただ不幸にも、多くの人々がビットコインをEゴールドのようなものだと考え始め、記録を残さないやり取りを模索しました。シルクロードや悪行への利用を考えていたのです。しかしブロックチェーンはそういうものには適しません。ブロックチェーンは記録を残す設計であり、プライバシーは守れますがアノニマスではないのです。

ビットコインは実社会とつながるものです。あらゆる場面でローコストにお金のやり取りを活用した新たなプロダクツを創造・構築する基盤です。

これらインプット、アウトプットを考えるとき、すべてがお金である必要性はありません。トークンやドルでもいいですが、ゲームトークンやコンピューターコード上のリターン値などでも構いません。

(略)

このスケールするシステムを活用したコマースを考えてください。

顧客にとって扱いやすく、ショップにとっては安全かつ迅速な決済を可能とするシステムがここに存在するわけですから。

お金としての機能に留まることなく、様々な用途への利用を考えてください。

ユーザーの私生活を売りさばかないインターネットです。ユーザーの行動を付け回らないインターネットです。

個々人が支払いへの選択権を持ち、またそれにいくらを支払うか把握できるシステムです。

ありがとございました。

訳:BSVJ