ジェリー・チャン by マリアン・ジェット|Jerry Chan (David Jerry) of SBI Holdings & Marianne Jett- FinCen, MSBs, AML/KYC

ジェリー・チャン=インタビュー
byマリアン・ジェット


■新ポスト

今年に入り、SBIホールディングスのジェネラル・マネージャーに就任したジェリー・チャン氏へのインタビューです。

ジェット氏の質問に対し、チャン氏は自身の新しいポストについて次のように回答しています。

子会社からの移動は特に役割が変わったわけではなく、言ってみればグループ内の「事務的」な変更で、仕事内容は開発チームのマネージメントが一部にあり、基本的にはチームの統括役といったところです。

暗号界の変化は速く、少しでもフォーカスがズレようものなら、瞬く間に後れを取ってしまいます。社の戦略的展望およびロードマップに沿った開発を行っているかなど目を光らせています。

他にも、開拓チームが投資を行う際に、我々の狙いに合致しているか、投資に値するかなど助言します。

マイニングを行う子会社がありますが、特にそこへの直接的な関与はありません。ただ、同社の責任者と連携して仕事をしています。

私はカナダで電気工学を学び、直ぐにニューヨークに移り、ゴールドマン・サックスに入社しました。MBAは取得していませんが、FX等を通じ、15年間ウォールストリート、金融関連の知識を実践で習得し、金融関連のソフト開発を手がけました。


■「資金移動業者」とFinCEN

ジェット氏は、FinCEN(フィンセン)について尋ね、チャン氏は次のように回答しています。

規制当局は明確な指針を示し、暗号界でどこまでが合法かなどのガイドラインを作成しました。その中で、何が「送金事業者」、つまりマネー・トランスミッターに該当し、法制度順守を求められるかなどを示しています。

送金者から金銭を預り、それを受取人へと運ぶ仲介者を「マネー・トランスミッター」と明確にしました。自動化されたものも含むため、「ノード・プロバイダー」はそれに該当し得るでしょう。

そういった意味において、「ライトニング・ネットワーク」はまさに送金事業者そのものと言えそうです。FinCENによって、ここからの規制当局は、ライトニング・ノード提供者へもっと詳細な情報提供を求めることになるでしょう。

また、ジェット氏は「カストディアンおよびカストディアル資金」、つまり資金受託者としてあり方、受託資金の扱いをFinCENがどう取り上げているかについて尋ね、両者は次のようなやり取りをしています。

チャン氏: カストディアル資金を扱うものは、トランスミッターというよりは「資金取扱業者」、マネー・サービス業と見なされます。金銭の請負管理人、ディポジトリー、つまり銀行ということになります。

ただ、カストディアル資金の扱いは、よりハードルの高い信託銀行に必要な免許で、ディボジトリーを行う一般の銀行は、通常のマネー・サービス業に分類されます。ペイパルなどは銀行ではありませんが、マネー・サービス業ということになります。

ジェット氏: 例えば、ライトニング・ノード提供者は資金をカストディするわけだから、最低でもマネー・サービス業免許を必要とするのではないでしょうか。

チャン氏: その可能性はあります。

ジェット氏: では、今はまだグレーといったところでしょうか。でも、少なくとも利用者のKYCAML(資金洗浄対策)情報を把握する必要がありそうですよね。

チャン氏: そう、まさにそこがキーポイントです。マネー・サービス業を営むには、記録保持や、顧客、利用者のKYCAML情報は必ず把握する必要があります。「顧客を知る」必要があるのです。

当局が一つ一つのノードを監視することはありません。ただ、何か重大なAMLに絡む事件が起こった際、ライトニングではどのトランザクションが犯罪者のものか識別できないため、たちまちシステム全体が捜査対象となるはずです。

ジェット氏: では、ビットコイン(SV)の場合はどうでしょうか。ピア・ツー・ピアですし、「マネー・トランスミッター」としての義務には無縁ではないでしょうか。

チャン氏: はい、何というか、まずお金のファンジビリティ、つまり代替性が認められるケースとして、例えば、金銭授受の際、「きれいなお金でない」ことを知っていてやりとりすることはNGですが、商品と交換に受け取るお金が、「汚いお金」として疑う理由がない限り問題は生じません。

また後に、それが犯罪にかかわったお金であったことが分かっても、授受の時点で疑う理由がなければ、そのお金は法的に受け取った側のものです。

仮にそうでなければ、世の中の経済活動は止まってしまいますよね。ビットコイン以前から、既にその辺は整理されていて、ピア・ツー・ピアのやり取りであれば、トランスミッターとしての規制対象にはなりません。

ジェット氏: 他に例えば、ストリーミング、ビデオ等、お金を預けておくようなタイプのペイメント・チャンネルは、マネー・サービス業として扱われるのでしょうか。

チャン氏: いや、いい質問です。正直その辺は、まだ考えたことがありませんでした。

それは特に「資金移動業」、マネー・トランスファー・ビジネスには該当しないと私は考えます。

例えば、利用者がビデオを見るためにディポジットした資金が、事業者に悪用される可能性は低いですし、利用者は他の目的への資金利用を事業者に許可しているわけでもありません。特定の商品・サービスに対して使用し、使わなかった分は払戻しが基本です。

そうしたことなどから、ペイメント・チャンネルは資金移動業者でもなければ、カストディアンでもありません。私の考えでは、ペイメント・チャンネルは「プリペイド」の枠に収まるはずです。

ジェット氏: ということは、やはりライトニング・ノードは、ペイメント・チャンネルというよりは、ストレートに資金取扱業者としてKYC等の義務が生じるわけでしょうか。

チャン氏: もし、ライトニングが、手数料を取り、資金移動を専門とするなら、それはまさにFinCENで定義される資金移動業者そのものです。

そういった意味において、ライトニング・ノード提供者は、手数料を得て、一方から一方へお金を橋渡ししますので、それをどう行ったかにかかわらず資金移動業者になります。


BSVBTCの決定的な差

ジェット氏: では、ビットコイン(SV)における手数料の扱いはどうでしょうか。ピア・ツー・ピアでのやり取りですが、手数料を受け取るマイナーが存在します。資金移動業には該当しないはずですよね

チャン氏: それはまったく素晴らしい質問です。

そうです。BSVのマイナーは資金移動業者に該当しません。こう見てください。

送金者が、送金の手続きを行う行為は、マイナーへ「この資金はこれまでに使われたことがあるか」と尋ね、マイナーが「使われたことがある・ない」を手数料を取って回答するようなものです。

BSVの資金移動は、送金者のデジタル・シグネチャーを通じ、受領者がデジタル・コントラクトを受け取ることで成立します。マイナーの作業そのものがお金を移動させているわけではありません。

言ってみれば、マイナーはシークエンス(送金順序)の整理を行い、タイム・スタンプを行うことで手数料を取っている。確かそれらはWPに書かれてあるはずです。

またキーポイントとして、BTCの場合、資金移動の過程で最終的にブロックの生成を待つ必要があります。それは資金移動業と解釈される可能性があります。

ジェット氏: それはオンチェーンのBTCでもですか⁉

チャン氏: その通りです!

これは私の考えの範囲ですが、やはりBSVの場合、マイナーは既に手続き済みのトランザクションを確認するだけなので、送金自体を作業しているわけではありません。

対してBTCの場合、確認作業を終え、それがブロック入りするまでトランザクションは完結しません。なぜなら、BTCは「リプレイス・バイ・フィーだから!(両者同時)」。

BTCの場合、確認作業を行うかどうかはマイナー次第です。ブロック入りを果たし、トランザクションが完結するのはその後のことです。

BTCのマイナーは送金プロセスに随行し、確認作業と手数料受入れの可否へ権限を持っています。ということは、ブロックを創っているのはマイナーであり、それゆえ、トランザクションに直接携わっているのはマイナーであるという仮説が成り立ちます。

BSVの場合、マイナーがトランザクションそのものに手を加えているわけではありません。


BSVの効率的な構造、BTCの脆弱な環境

ジェット氏: 確かにそうですね。それでは最後に追加事項や、他にエキサイティングなプロジェクト等、何かありますか。

チャン氏: 現在携わっているプロジェクトに多くのことは言えませんが、マイニング助成金制度がゼロまたはそれに近い状態になった後の世界に、みながもっと注視すべきであると考えています。

BTCは非常に脆弱な環境に置かれています。仮に、何らかの悲惨なハッシュ喪失に見舞われた場合、例えば価格暴落や、大陸規模の停電などが起これば、メンプールは未確認のトランザクションで満ち溢れてしまいます。

BSVの場合は、ブロックサイズが無制限に向かっていることなどで、例えば数日間のハッシュ停止でトランザクションが積み上がっても、仮に現時点でもブロックが一杯になるまでにはそれ相応の時間的猶予があります。

その間も、マイナーはトランザクションを受け入れ、それらはメンプールに送られ、ダブルスペントに対して目を光らせることができます。誰もハッシュを生んでなくとも、BSV環境なら当面は商売が続けられるわけです。

ジェット氏: BTCの場合、ライトニングは送金手数料を受け取るかもしれませんが、ハッシュがなければマイナーは収入が止まります。そうなれば誰がチェーンのセキュリティを管理するのでしょうかね。

あと、一ブロック当りのトランザクション数と電力消費の相関についてお話し頂けますでしょうか。

チャン氏: BSVの場合、基本的に電力消費量は一ブロック当りのトランザクション数に比例するわけではありません。よって、大きなブロックの方が収支面でより高効率になります。

ハッシュが上下動し、その中でトランザクションをこなしていきます。トランザクション数が増えるほど効率性が増し、いずれそれは、全世界の銀行を合わせたバンキングよりも効率的なものになります。

対するBTCは、ハッシュが上り続けなければなりません。仮にハッシュが下がり始めれば、それは非効率性を意味し、エネルギーを無駄に消費してしまいます。

それはまったく経済的合理性に欠けます。なぜか、ある人々はそうは考えていないようですが..

ジェット氏: 大きなブロックとその有利性、効率性などが、SBIBSVと共にある理由ですよね。

チャン氏: あ、我々はとにかくいいものをサポートしていきますよ。(汗?)

我々はリップル等、プライベート・チェーンがありますしはい、でもパブリックチェーとしては、スケールするチェーンをサポートします!