Dr. クレイグ・ライト by チャールズ・ミラー|Craig Wright: Bitcoin is not a cryptocurrency with Charles Miller

Dr. クレイグ・ライト=インタビュー
by チャールズ・ミラー
コインギーク・カンバセーションズ


ミラー氏: まず最初に、過去を少し振り返ってみたいと思います。

ネットケイプの共同設立者であるマーク・アンドリーセン氏によれば、技術革命にはパターンのようなものがあり、例えばPC1975年、インターネットは1993年、ビットコインは2014年と、どれもみな、技術オタクらによる反支配層、反既得権的な時期を経て、やがてそれらが商業化され、一般社会に浸透していくとしています(2014年、ニューヨーク・タイムズ)。

これらの技術は明らかに、現世界で必要不可欠なものばかりです。どうでしょう、実際にその通りだと思いますか。博士は、ビットコインが明確に社会に必要とされるようになるまで、あとどのくらいの期間を要するとお考えですか。

ライト博士: そこに達するまでは、まだ相応の時間が必要だろうと思います。

ただ、同意できない部分もあり、彼はやや古びた「シリコンバレー的」な思考でいて、型にはまった感があります。ビットコインはまったくそいう類のものではありません。

ビットコインは不変的な痕跡・証拠を記録するシステムでかつ、支配力を持たないマネーとなることだけを目指して設計され、それ以外の何物でもありません。あえて言えば、シリコンバレーと正反対の方向にあると言えます。

ミラー氏: ええ、でもコンピューターコードと関わりが深いですよね。

博士: そうですが、それを言えば、単純な電話機の部品だって長年関わりがあります。

ビットコインの場合、他のテック革命ほどの時間はかからないと考えています。歴史的に見れば、浸透までおよそ50年程かかっていますが、ここへきてそれらはもっと早まっています。

ミラー氏: なるほど、確かにインターネットは2530年程度ですね。

それで、私には解けないナゾがあるのですが、是非、ご説明願います。ビットコインは「暗号システム」でもなく、いかなる形式の「通貨」でもない。ということは、ビットコインは「暗号通貨ではない」ということでしょうか。

博士: その通りです。

同じようにアルゴリズムを使用し、似た部分もありますが、あの「Eキャッシュ」はまさに暗号通貨で、暗号化による他者への目くらまし、隠蔽をします。クリプトーグラフィー、つまり暗号化することとは秘密化文書を作成することです。ビットコインはまったく正反対のものです。

ビットコインは公の記録物です。ゆえに、プライバシーの保護を設計上組み込んでいますが、実際に「暗号化」するものではありません。暗号化されたデータをチェーン上に保管することはできます。しかし、ビットコインのチェーンそのものは、まとめられたデジタル署名であり、またチェーンで連なった証拠物であり、他の一連の無名化送金を目的としたものとは異なります。

ミラー氏: では、「通貨でない」とはどういうことでしょうか。

博士: 通貨とは、基本的には国家の枠組みの中で使われる法的用語で、「通貨=お金」ですが、「お金=通貨」とは限りません。通貨と呼ぶには、法的なお金、貨幣でなくてはなりません。アメリカではドル、UKではポンド、フランス、スペインではユーロといったようにです。

ミラー氏: なるほど、通貨と呼ぶには公式でなくてはならないと言いうことですね。

ただ、博士はビットコインが広く使用され、国家に採択されて通貨となることを望んでいるのでは

博士: ええ、いずれはそうなるでしょう。

ただ、最初に目にするのはトークン化されたフィアット、つまり国家や中銀が、ビットコインの機能を使用して、ビットコイン上で自国通貨を発効することでしょう。

ミラー氏: なるほど。では、価値の保存というよりは、まずはビットコインの仕組みを利用するということですね。

博士: ええ。ただ、価値の保存はありません。よく勘違いされることです。

みな価値の保存を語りますが、それは恐らく、過去に金がインフレ・ヘッジとしてそうであったからだと思います。

定義的には、「価値の保存」と呼べるには、契約的に双方の了解がなくてはなりません。例えば、私が家賃を支払うのに、「定められた量」のビットコインで支払うことが契約上のものであれば、ビットコインには価値を保存する機能があると考えてもいいでしょう。

でもそれが、契約上「○○ドル」とあれば、例えそれをビットコインで支払うことができても、あくまでもドルの値が定義されているわけですから、その際はドルが価値を保存しているのであって、ビットコインに価値を保存する機能があるとは言えません。

それは、通貨間の為替レートによって、いくら価値が上ろうが、逆に下がろうが、それは価値を保存していることにはなりません。契約上、記されている支払額がビットコインでない限り、価値保存機能はありません。

ミラー氏: 国々が膨大な借金を自国通貨上で抱えていることが、いずれ人々がビットコインを使うきっかけになると博士はお考えですか。

博士: 一部ではそういった見方もあるかもしれません。以前のギリシャのときのように。

ただ、米政府が崩壊するなどといった主張は度を越えていると思います。

ミラー氏: では、ビットコイン・サポーターなど、世界経済崩壊のようなものを待ち望むべきではありませんね。

博士: はい。残念ながら、そういう発想が間違ったタイプの人々を惹きつけてしまったようです。

ビットコインはそういうことを手助けするものではありません。それは他のどの暗号通貨も同じです。

ミラー氏: ビットコイン・エコスシステムのもう一方に、ブロックチェーンとメタネットがあります。オリジナルのホワイトペーパーの中では、ブロックチェーンについて一度も言及されなかったと認識していますが

博士: オリジナル・コードの中に二度出てきます。正確には「ブロック・スペース・チェーン」と書きました。

ミラー氏: あぁ、なるほど。だから私が探した範囲では見つからなかったんだ。

博士: よくそういうことを突かれます。例えば、私がビットコインの「C」の字に大文字を使うと、本当のサトシはそんな書き方をしないとか・・・。

ミラー氏: 博士は、今のインターネットは広告ベースになっていて、それを「コモンズの悲劇」に例えていますが、これについてビットコインの可能性や、テックの巨人に与える影響等についてお話しください。

博士: すべてが変わると思います。人々が、自身の行動のすべてをツイッターやフェイスブックに差し出すのではなく、各々が自身のスペースを持ち始め、個人データへのコントロールを取り戻すようになります。

ミラー氏: 個人データの所有に関してプライバシーの関心が高まっていますが、一方で、あえてデータを売って、代わりに無料のサービスを得ようと考える人も少なくないのではないでしょうか。

博士: これまでは人々に選択肢がなく、否応なしにデータを差し出さなければサービスを利用できませんでした。それはまるで電力供給を絶つと宣告されているようなものです。既にこれだけのサービスが社会に浸透していて、それによって人々は繋がり、生活に欠かせないものになっているのに、拒否することがどうしてできたでしょうか。

ミラー氏: では人々が、サービスが気に入らないからと言って、少しだけ支払うというようなことが可能になるのでしょうか。

博士: 既に多くの人が、グーグルやマイクロソフトのサービスに対し、実際にお金を払って使っています。ただ違いは、お金を支払ってサービスを買いながらも、やはり個人データは抜き取られています。先ずはこうしたサービスの価格が下がり始めるでしょう。

例えばグーグルは広告枠で荒稼ぎしていますが、実際に人々に向けられる広告は極めて低質です。人々はそうしたことに嫌気をさし、例えばダック・ダック・ゴーに切り替えるなどしています。

それで(無広告の)代わりを想像してみてください。ウェブ検索をするのに10分の1セント、あるいはそれ以下の額を支払います。いずれは1,000分の1セントにさえなるかもしれません。重要なのは、これまでのこうした広告モデルが、極めて非効率であるということです。

数百もの広告を流し、やっと一つか二つクリックされる程度です。これは機能していません。さらに詐欺や犯罪にもつながっています。クリック・ファームもありますよね。マイクロソフトなどは、不正に広告収入を得ようとするものを摘発する専門チームまで用意しているほどです。

ミラー氏: 博士はテクノロジーの他にも、法律に興味があり、勉強を続けています。そしてnチェーンなどは相当数の特許を蓄積し続けています。こうしたこの根底には、何か戦略的ものがあるのでしょうか。

博士: それはやはり、開発への影響などを考えてのことです。

「労働」について考えると、例えば道路を掘ることが労働ということではありません。労働は人々の思考によってもたらされるものです。

考えてみてください。農夫が斧や犂を使って耕したとき、当然、その対価を得るは道具ではなく農家です。すべての作業は農夫の合理的な判断の下に統括して行われます。農夫は相応の時間を使って「思考」を凝らし、何かを創造したことになります。こうしたことは、知的財産権と同じなのです。

現実的に、誰かが何かを開発、想像するのであれば、それらはみな正当な対価を得るべきです。また開発へのインセンティブとしても重要なことです。
 
ミラー氏: では、それらが意味するところは、いずれは特許の不正使用に目を光らせることなわけですね。またそれは、ビットコインSVチェーンの利用を拡大することにもつながります。もちろん、特許による開発者への報いなどに対する正当性はよく理解できます。

ただ、どうでしょう、これまでビットコインの多くのことがオープンに進められてきています。ここへきて特許の主張を進めて行くことと、どうバランスを考えればよいでしょうか。特許は当初から主張していたわけではありませんよね。

博士: いくつか事情があってのことです。一つはハンドルネームを使って特許を取ることはできません。著作権は可能ですが、特許には実名が必要です。また相応の費用も必要になります。

現実的に、当初はクリプトーグラフィック・アルゴリズム、デジタル・シグネチャー等、多くの部分でオープンソースにする必要がありました。ただ当初から、ビットコインの発明に対する特許すべてをオープンにするとは考えていません。

ミラー氏: 現在2つの博士号獲得を目指し、毎朝、中国語を30分、週一でボクシング、3日に一度プライベート・トレーニング、さらにnチェーンの仕事など、どうやって時間を探すのですか。

博士: 寝ないことです(笑)。いつも早起きして妻に迷惑をかけてしまいますが。

ミラー氏:  そこまで頑張る必要はないんじゃないですか。

博士:  それはどういう意味で?

ミラー氏:  それらはみな趣味的なものでは?

博士:  いいえ、そんなことはありません。世の中には習うことはまだたくさんあります。

人生に方向性を持たせ、この世に何かを創出することで、人々はもっと成長できるはずです。

ミラー氏: 博士は過去に、長老派教会の理事だった時期がありました。現在もそうでしょうか。

博士: 正確には教会銀行の理事を務めていました。今はそれを続ける時間がとてもありません。

ミラー氏: ご自身はカソリック校出身だったと思いますので、長老派教会の銀行理事を務めたということは、改宗されたということでしょうか。

博士: はい。育ちはカソリックでしたが、資本主義に対する考え方や制度的に同意できない部分もあって改宗しました。

ミラー氏 以前に読んだもの中で、私にとって非常に興味深かったのが、博士のヴェネズエラおよびコロンビア時代、性奴隷撲滅に向けて活動されていたことです。

博士のそうした「利他的」な部分、エピソード等をお話しください。

博士: 「利他的」に映るかもしれませんが、私には特にそういった意識はありません。私自身、どのような社会に生きたいか、嘘のない開かれた社会をと考えるとき、誰もがそれへの責任があるのだと思っています。

それには何らかのコストがかかるものです。好き嫌い抜きに、そうしたことは棚ぼたで実現するものではありません。政府が何でもしてくると待っているのは間違いです。誰もが社会の一部で、各々に何らかの責任があるはずです。

納税の見返りに、国がサービスを提供するのが「社会契約」だなどということはありません。ポジティブな社会の構築を目指すには、みなが積極的に活動して始めて実現するものです。

ミラー氏: ヴェネズエラではどのような形で活動を?

博士: アメリカ政府との契約でした。現地組織で情報処理・分析などを行っていました。

ミラー氏: 博士は反・社会主義者で知られていますが、そうした一連の活動は、より社会主義的ではありませんか。

博士: そんなことはありません。

ある人々は「無政府資本主義」なるものを掲げ、自分たちは完全に自由の身だなどと、ウェブ上で触れ回っています。

社会とのかかわりを持たないことが、個々の独立性を保つということではありません。誰もが何らかの形で他人とかかわりがある中で、自分たちだけは政府の支配を受けない独立した存在だなどとの考えはまったくの勘違いです。

ミラー氏: ただ、博士は政府が何でも社会的責任を負い、政府を頼るといった考えには反対ですよね。

博士: 政府とは一体、何を指すでしょうか。我々こそが政府です。

ミラー氏: でも、我々は様々な社会活動を政府制度を通じ行っています。例えば予算配分などは、政府が行っているわけですし。

博士: そういった意味での政府は、真の助けになっていません。それによって人々は政府に依存し、自由と選択を遠ざけ、働くことさえ止めてしまう人もいます。

私は、政府の支援を受けることを選択しなかったシングルマザーに育てられたことを幸運に感じています。

ミラー氏: それはどういうことでしょう。

博士: もっと金銭的に恵まれながら、政府からの支援を受けることを選択した家庭で育った子供たちが、後にどうであったかを目の当たりしています。

私は母が懸命に働く姿を見て育ち、母が力強く人生を生き抜いていることに多くを学びました。人々が、自身の人生の責任を他人任せにするようになってしまうと、彼らの人生はそれまでです。

今の社会では、政府等の支援は人々の当然の「権利」だ考えられがちです。チャリティーに助けられ、それに恥を感じたのならまだ救いがあります。そこから抜け出したいという向上心が生まれるからです。しかし、そうした支援は当然の権利で、「政府には私を助ける義務がある」としか考えなければ、人々はそれにしがみつき、それ以上のことはしなくなってしまいます。

ミラー氏: 博士は自身がビリオネアであることについて話しました。

それは、自身が実際に所有する富以上にリッチに見えるドナルド・トランプのようなビリオネアでしょうか。それとも、富を得る以前から住んでいた家に今も住み続けるウォーレン・バフェットのようなビリオネアでしょうか。

博士: ええ、どちらかと言えばバフェット系かもしれません。

一時的には、それまで手にしたことのないお金を手にし、少し派手に使ったときもありました。乗りもしない雨ざらしになるだけのランボルギーニを買ってしまったりとか。でも現状は、妻が私に言うように、確かにお金持ちにとってのお金はつまらないものです。

ミラー氏: 「社会の不平等」について話を少し戻したいのですが、ビル・ゲイツは何かと物議の多い人物です。「ビル&メリンダ・ゲイツ基金」など。

博士: それはやや苛立たしい部分で、チャリティー基金をうたい、税法をかいくぐる産物だと思っています。それによって、もっと多くの支出を可能にし、より多くの支配と権力を彼らに与えています。納税放棄と言ってもいいでしょう。

ミラー氏: では彼らのそれは、純粋な利他主義からくるものではないと。

博士: ですね。

利他主義は言葉の方便です。実際に利他主義など存在するとは思っていません。

ミラー氏: でも、博士は社会活動を通じ、何らかの社会支援をしていますよね。

博士: ええ、でもそれは資本主義からくるものです。創造、建造、これらは利他主義ではありません。

ミラー氏: では自身を利するものであると?

博士: まさに。

みな、社会に貢献したくてそれをするのではなく、自身がそうしたことを社会に実現しからこそしているのです。

ミラー氏: ですが、ビル・ゲイツは、自身が基金を通じて行っていることを社会への恩返しのように発信しています。

博士: もちろん、そのような言葉は世間に受けがいいですよ。

ミラー氏: ビル・ゲイツは、これまでの自身が置かれてきた様々な環境がそれを可能にしているのであって、自身が賢いからそれができるのではないとも言っていますが。

博士: そんなことはないですよ。社会がどうの、形だけです。

ミラー氏: では博士の場合、ビリオネアとして、それだけのお金を手にできたのは、みな自身が汗水流して懸命に働いたからだとお考えで?

博士: 汗水流して一生懸命働くことが稼ぎにつながるのでありません。

賢い仕事をし、人々が欲しがっているものを世に創出することが稼ぎにつながるのです。極端に言えば、それらが仮にポルノであっても、ギャンブルであってもです。何もせずに、社会が何かを提供してくれると待ち望むのではなく、自ら何かを世に送り出すことを意識すべきです。

お金はそうして稼ぎ出すものであって、一生懸命働けば、それでみなが平等に稼げるというものではありません。もしそうなら、何をもとに物事の真価を計り知ることができるでしょうか。

ミラー氏: 今年に入り、博士はよりオープンに、博士がサトシであったことを話し始めています。

このことに関し、それ以前と比べ大分異なる印象を受けますが、どのような変化があったのでしょうか。

博士: 残念ながら、私の周辺を強欲なペテン師どもが取り巻いていまして、法廷を通じて、長年蓄積したそれらを振り払うには、正式に身を明かす必要がありました。

私を詐欺師呼ばわりする多くのクズどもが、私を取り囲もうと躍起になっています。無記名の犯罪コインを通じて、彼らは麻薬市場、暗殺市場等における自身の犯罪を隠蔽する決済手段を確保したがっています。

ビットコインは決してそういうものに利用されるもために存在するのではありません。彼らは、私を阻止しようと必死ですが、彼らの望み通りにはならないでしょう。

ミラー氏: なるほど。それらを実行するためには、すべてきれいにカミングアウトする必要があったというわけですね。

博士: ええ、不運にも。

ミラー氏: では次に、サトシ・ナカモトの由来についてお伺いできますか。

博士: ええ、私は長年、エコノミスト誌の読者でして、例のフィニックスに行き着くわけです。

アッシュ(灰)の中から舞い昇る生れ変った「マネー」の様子が、当時80年代に大きな話題になり、大学に通い始めたばかりの私には何か惹き付けられるものがありました。それで、少し子供染みているかもしれませんが、(ポケモンの)アッシュは日本ではサトシです。ナカモトは日本の哲学者(富永仲基)に由来します。 

ミラー氏: 博士はかなり小さなころから日本文化に興味があったようですが。それはどういった経緯で?

博士: 私が成長する過程で一緒にいた人が日本人でした。それと、私は武道に興味がありましたので。

ミラー氏: 一つ、前に誰かが書いたもの中ので、それを今読み上げますと、「サトシは歴史的に重要なサイファーである。より正確には、彼は神秘的で、忘れさ去られることなく、デジタル時代の神聖なモデルとして扱われるべきである。それはまるで、ウィリアム・ギブソンの小説にあるように」と言っています。

これについて何かご意見がありますか。

博士: 病気としか言いようがない。そうしたアホどもが勝手にサトシを神聖化して、でっち上げ、まったく気持ち悪いにもほどがある。

ミラー氏: ええ、でも、もしビットコインが大もとの仕掛け人に依存しないシステムの構築を目指すなら、そういうところに本当の価値があるのではないですか。

博士: ビットコインはまったくそういったものではありません。「非中央集権」どうのといったものは、でっち上げの幻想もいいところです。

「金融システムの民主化」とか、そんなものは実際につくれません。それはビットコインに限らず、イーサリアムや、その他いかなる派生型のシステムであっても同じです。

要は、誰も変更を加えることのできない安定的なプロトコル、これに尽きます。その上で、開発者はオープンで自由な開発を行うべきです。

プロトコルに変更が加えられる環境では、また誤った方へと導きたいグループへ自由を与えてしまいかねません。彼らは暗号界の、そして社会のがんなのです。

ミラー氏: では逆に、サトシの神秘性をなくすことが、博士に大きな権威と影響力を与えることにならないでしょうか。

博士: プロトコルは、もう誰も変更することができないのですから、そのようなことにはなり得ません。

私に何らかの権威があるとすれば、それはプロトコルの上の開発に対してです。それらに対し、私は数百の特許を取得しています。最終的に、人類史上最多の特許取数を目指します。

今は日本人のLED照明の発明者が最多です。彼は5,500ほどの特許を取得しています。私が今手掛けているものを合計すると大体そのくらいの数に達する予定で、最後は一万が目標です。

ミラー氏: それにはこの先、どのくらいの時間が必要ですか。

博士: かなりの時間がかかります。でも、私はまだあと30年は続けるつもりでいます。

ミラー氏: 博士はジミー・ウィンとカルヴァン・エアーとともに、何というか、三頭体制でビジネスを進めていますが、お三方の関係はどうですか。

博士: いたって良好です。我々は、互いに各々の長短を補う形でうまくやっています。

私はマーケティングはめっきりですが、その点、彼らは強いです。私の強みは創造、構築、発明方向で、裏方です。

ミラー氏: ええ、でも博士はそれなりに表舞台に登場していますし、決してシャイなわけではありせんよね。

博士: いえ、始めの頃はそうでした。

そういうのが好きではなく、克服するまでに結構な時間を要しました。ジミーに学んだ部分も多くありました。

ミラー氏: 今も、仕事の中でそうした部分は辛いと感じますか。それとも少しは楽しめるようになりましたか。

博士: そうですね、まだどちらとも言えません。今も、学ばなければならないことは多くあります。少しずつは上達しているかもしれませんが結構疲れます。

どちらかと言えば、私は社交的というよりは内向的で、人前でのスピーチはやはり多くのエネルギーを消費します。

ミラー氏: では、もう一つ最後にお伺いします。本日最後の「バトル」です!

クウォンタム・コンピューティングについてです。

計算能力が飛躍的に高まるわけで、ビットコインやPoW、ノード等に影響を及ぼすのではないでしょうか。

博士: いいえ、まったく。

第一に、クウォンタム技術のアルゴリズムは別のもので、まだ存在すらしていません。それで先ずは、ハッシュが解読されることはありません。近い将来にビットコイン上のハッシュ化機能が解読されることもありません。

クウォンタム・コンピューターは、IBMに膨大な補助金を注ぎ込むことが目的化していて、実際にそれらしきものが完成することは決してないでしょう。仮に、その神秘のベールに包まれたクウォンタム・コンピューターが登場したとしても、それは数十億ドルもの予算を使い、ごく限られたものの計算にのみ使用できる程度に過ぎません。

さらに、そこへの到達には、一万ヘクタールに及ぶスペースも必要で、量産化は不可能です。1論理キュービットでさえ、これまで一度も完成したことがないのです。それへ近づくと、いつも同じ地点で崩壊が始まり、完成にいたらないのです。

では仮に、本当に仮に、物理的キュービットではなく論理キュービットが、必要とされる数十億キュービットを創れたとしても、ハッシュは解明できず、エリプティック・カーブ問題の解決にさえ何ヶ月も要します。それができて、やっと数分間、ビットコインを攻撃しようかというところまで来れるかです。

もっと言えば、それを本当に建造するには、地球全体を必要な装置で埋め尽くすことになり、必要なレア・アースを十分確保するには木星の中心部にでも行かないとならないでしょう。

クウォンタム・コンピューターは80年代から続く、全く無駄な偽物売りの国家プロジェクトです。経済や物理、コンピュテーションを知らないメンバーが創り上げた神話なのです。

ミラー氏: あとよろしければもう一つ。(ビットコインの)電力消費についてはいかがでしょう。

博士: グーグル社とグーグル検索に、数千倍もの電力が必要なのをご存知でしょうか。ビザ・マスターカードの極めて非効率な電力消費はどうでしょう。

ミラー氏: では、電力消費についてもまったくのでっち上げであったと?

博士: ビットコインの崩壊を望む人々はあらゆる虚偽を発信します。

実はビットコインはプルーフ・オブ・ステークより効率的です。また、プルーフ・オブ・ステークは投票権を備えた権力構造にあり、証券そのものです。

ビットコインとその不変プロトコルは、お金から権力を取り除きます。

誰もプロトコルに変更を加えることができなければ、そのお金に権力は存在しません。

それはこの私も、そして神であってもプロトコルに変更を加えることはできないのです。

お金は権力以外の何物でもありません。ビットコインはこれを解決したのです。

ここから先、それは全世界へと広がっていくことでしょう。

訳:BSVJ

Craig Wright: Bitcoin is not a cryptocurrency with Charles Miller